既存の校則やルールに対して生徒が主体となり、先生・保護者などの関係者との対話を重ね納得解をつくることを通して、課題発⾒・合意形成・意思決定をする⼒(市民性”シティズンシップ”)を育くプロジェクトです。
安田女子中学高等学校
安田女子中学高等学校は、女性の教育が重視されていなかった時代に、「女性のために教育の場を」と1915年に立ち上げられた学校です。1945年には原爆投下で校舎が全壊し多くの教員や生徒を亡くすなど、苦難を乗り越えながら、女子教育に取り組んできた伝統のある学校でした。礼儀作法や掃除、茶道などを通して思いやりや教養を身につけることを大切にしており、制服の着方の指定や髪型の指定、「スマホ持ち込みはダメ」というルール、「プリクラやゲームセンターは保護者同伴」など放課後の過ごし方に関する決まりなど、細かな校則がありました。
2020年6月に生徒たち20名で有志メンバー(ルールメイキング・プロジェクト)をつくり、入学したばかりの中1・高1をのぞいて全校生徒に校則やルールについてアンケートをとってみると、80%以上が「校則を改善したい」という意見でした。生徒たちは見直したい校則を9個に絞り、全校アンケートで他生徒の見直したい度を調査しました。アンケート結果をもとに議論し、今年度扱う3つの校則を決定しました。校則の改定案を策定するために、3つのプロジェクトチームを作り、調査を実施しました。全校アンケートや保護者アンケート、教員へのインタビュー、警察へのインタビューを重ねました。
調査を通して見えた様々なステークホルダーの声を踏まえて、改定案の具体的な文言を作成しました。弁護士からのフィードバックを反映し、校長、副校長、高校教頭、中学教頭、生徒支援主任、生徒指導主任へ提案しました。その後は教員との対話と調整を行い、2021年4月から改定した校則が実施されることになりました。
安田女子中学高等学校の事例から見えた生徒の変化や課題(途中経過)
2020年12月11日、安田女子中学高等学校ではプロジェクトメンバーと中間振り返りワークショップを実施しました。ルールメイキングの活動を通して「①どんな気づきや学びや発見がありましたか?②あなたにどんな変化がありましたか?」の2点を軸に振り返りました。また複数の生徒・教職員へのインタビューも実施し、ルールメイキングの活動を通した生徒の変化や課題について、以下のポイントが見えてきました。
【変化1】生徒の自信の芽生えや意見を伝える力の向上
ルールメイキングプロジェクトの活動を重ねる中で、生徒たちには、自分の意見を
他の生徒や様々な人に伝える力や自信がみられるようになった。
【変化2】多様な意見の認識や、対話的・民主的なプロセスの重要性の理解
生徒たちから多く聞かれたのが、多様な意見に触れることでの視野の広がりである。
教職員や保護者、外部の人など様々な人の声を聴きながら活動を進めたことの意義といえよう。
【変化3】大人や学校との信頼関係の醸成
ルールメイキングプロジェクトの活動は、教員の生徒理解の深化に加え、生徒の側にとっても校則の背景にある教員側の考えや大人の意見の理解にもつながり、相互の信頼関係に寄与した。
【課題1】大人の意見への同調や自己規制が促される可能性
生徒だけでなく、教職員や多様な関係者の声を集めることは大切な学びとなった一方で、
時間が限られていたこともあり、生徒が大人の意見に押されてしまった可能性も考えられる。大人の意見も、必ずしも鵜呑みにせず、検討を重ねるようなサポートが課題として見出された。
【課題2】全校生徒との丁寧な対話の必要性
全校生徒との意見交流については、掲示板や新聞部の発信など生徒たちも工夫を重ねてきたが、コロナ禍の制約もあり、それでも十分にできなかった面も考えられる。ルールが変わることに慎重な立場の生徒も含め、丁寧な対話を重ねる進め方について、引き続き検討が必要である。
https://rulemaking.jp/
https://www.katariba.or.jp/
実証事例名 | ルールメイカー育成プロジェクト 〜ルールを学び、対話的に問題解決する力を育む実証事業〜 |
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受託事業者名 | 認定特定非営利活動法人カタリバ |
実証年度 | |
事業カテゴリー種別 | |
実証校 | 安田女子中学高等学校/岩手県立大槌高等学校/新渡戸文化中学・高等学校 |
対象 | |
対象学年 | 中学1年〜高校3年生 |
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